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時の移ろい

05.16 Thu | Category: COLUMN

数日前、16棟あった同潤会アパートはおよそ80年に渡る役目を終え、遂に最後の一棟である「上野下アパート」の解体が始まることを知りました。同潤会アパートとは、1923年に起こった関東大震災の復興支援のために設立された同潤会によって、大正末期から昭和初期にかけて建てられた鉄筋コンクリート造の集合住宅です。

同潤会_上野下アパート

先にも述べたように、老朽化のため順次取り壊されてきた訳ですが、既に取り壊された一部のアパートに対して、歴史的建築物ということで、それらの保存運動が起こりました。しかし、建物の著しい劣化と耐震性能の問題で住人には建替え希望者が多かったこと、権利関係が複雑だったことや立地条件のいい場所が多かったために、建替えのメリットの方が大きかったことなどの理由で、保存運動は困難だったようです。

同潤会_上野下アパート

当時としては、先進的な計画や装備がなされ、居住者への配慮が行き届いたきめ細かな計画が評価されてました。都市の中間層が居住者として想定されたが、働く女性のためのものやスラム地区対策のものもあったといいます。特に、大塚女子アパートには、エレベーター、食堂、共同浴場、談話室、売店、洗濯室、屋上には音楽室、サンルームが完備された、当時最先端の働く独身女性の羨望の居住施設だったそうです。

同潤会_上野下アパート

今思えば、当たり前の設備がほとんどです。そんな現代に生きる私たちにとって、本当に必要なものは何なのか、設計者が果たすべき役割は何なのか、考えさせられます。

近年、老朽化した名建築の保存活動が話題になります。しかし、維持・保存に係る費用や土地の最有効利用などの側面から、その活動も容易ではないようです。つい先日も、吉田五十八設計による住宅が取り壊されることに決まったようです。私は、名建築がなぜ素晴らしいのか、巨匠と呼ばれる建築家はどんな気持ちで設計したのかという「精神性」を保存するという意識が重要ではないかと考えてます。


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